「歯周病はキスでうつる?」唾液感染の真実と菌を増やさない生活習慣

歯周病は生活習慣病として知られていますが、「キスや口移しでうつる」という話を聞いたことはありませんか?
結論から言うと、歯周病菌は唾液を介して人から人へ移る可能性があります。
ただし、必要以上に怖がる必要はありません。大切なのは菌をゼロにすることではなく、増やさないことです。

歯周病菌はもともと体にいる“常在菌”

歯周病の原因菌は、もともと私たちの体に存在する常在菌の一種です。
人は無菌状態で生まれ、その後、家族や生活環境からさまざまな細菌を受け取りながら成長します。

むし歯菌と同様、歯周病菌も唾液を通じて感染することが分かっており、特に家族間での感染が多いとされています。

子どもの場合、感染しやすい時期は生後1歳半前後。この時期は乳歯が生えそろうタイミングで、「感染の窓」と呼ばれています。
そのため、食事の口移しや食器の共有を控えましょうと言われるのです。

大人でも感染は起こる

むし歯菌は主に幼少期に感染するのに対し、歯周病菌は成人後でも移る可能性があります。
研究では、歯周病の25〜75%が夫婦間感染と考えられており、海外では「キスで歯周病がうつる」という認識も広まっています。

とはいえ、キスを避ける必要はありません。口の中には300〜700種類もの細菌が存在し、善玉菌と悪玉菌がバランスを取りながら共存しています。

重要なのは、菌の種類ではなくバランスです。

歯周病は「菌が増えたとき」に発症する

歯周病菌は単独では大きな害を与えません。問題になるのは、菌が集まり増殖したときです。
つまり、口の中に歯周病菌がいても、増えなければ歯周病は起こりません。

そのため、目指すべきは「完全除菌」ではなく、菌の増殖を抑えることです。

菌を増やさないための3つのポイント

① 毎日のケアと定期メインテナンス

歯みがきと歯科医院での定期的なクリーニングは、菌の増殖を抑える基本です。

② 免疫力を下げない

歯周病は免疫状態の影響を強く受けます。糖尿病があると歯周病が悪化しやすいことはよく知られています。

③ 生活習慣の見直し

  • ストレス
  • 栄養不足
  • 喫煙

これらは歯周病を進行させる大きな要因です。特に喫煙は発症・悪化リスクを大きく高めます。

善玉菌を活用する新しい予防の考え方

近年は、口腔内の善玉菌を増やして環境を整える「バクテリアセラピー」も注目されています。
中でも乳酸菌の一種であるロイテリ菌は、歯周病菌の増殖を抑える働きが期待されています。

海外では乳児期から取り入れる試みもあり、口腔内の歯周病菌が大幅に減少したという報告もあります。
日本でもタブレットやヨーグルトなどが販売されており、セルフケアの一つとして取り入れる方も増えています。

歯周病予防は「菌との付き合い方」がカギ

歯周病菌は誰の口の中にも存在します。大切なのは、過剰に恐れることではなく、
日々のケアと生活習慣によって増殖を防ぐことです。

正しい知識と習慣が、歯周病を遠ざける最大の予防策になります。

監修:表参道若林歯科医院 理事長 若林健史