歯周病の再生療法

歯周病の再生療法とは?

歯周病治療で歯周病の原因である歯周ポケット内入り込んだプラークや歯石のなかの病原菌や病原菌が産生する毒素全体を取り除くことにより、歯周病は改善されていきます。一方で、深く進行してしまった歯周病によって壊されてしまった歯周組織までが改善されるわけではありません。歯周組織再生療法は、壊されてしまった歯周組織を回復させるのが目的です。

今までの歯周病治療は、歯周病が治っても歯周病によって下がってしまった歯肉の回復が難しかったのですが、再生療法は骨と歯肉を少しでも早く再生を促す治療法です。骨の再生は起こりますが歯肉を審美的に再生させるのは難しいのが現状です。

治療法のご紹介

GTR法

歯周病の治療が完了すると、人の持つ本来の自然治癒力で再生しようとします。しかし、歯周組織の再生速度よりも歯肉の再生のほうが早く、より審美的な歯周組織の回復を妨げてしまいます。GTR法は、歯周外科治療を行って原因を除去した後、メンブレンと呼ばれる膜を設置し、歯肉が再生している歯周組織の邪魔をしないように膜で守る治療です。そうすること、設置したメンブレンの下でゆっくりと歯周組織が再生していき、健全な状態に近づいていきます。

※歯周病の進行度合いによっては、治療が難しくなる場合もあります。

エムドゲイン

エムドゲインは、局所的に深く骨が失われた場合に適しています。歯周外科治療で原因を除去した後、エムドゲイン・ゲルと呼ばれる歯周組織の再生を誘導する薬剤を歯根表面に塗ります。乳幼児の歯の発生の研究から生まれた再生療法で、骨を中心とした歯周組織再生の活性化を促し、本来なら抜歯を余儀なくさせる状況から救うために用いる方法です。すでに深く骨が溶けてしまっているため、この療法が適用可能か判断をするのが、日本歯周病学会認定の専門医の重要な役割です。

再生療法でまるで元の審美性を短期間で回復できると謳われていることが多いですが、進行状況とご本人の自然治癒力、そして回復にかける時間が鍵を握ると言えるでしょう。

症例で見る歯周再生治療

主訴

歯周病を治したい

術前

歯科ドック得た検査結果をコンサルティングで伝え相談することで歯周病の原因、治療法など認識を共有します。初期治療でプラークコントロールの徹底、歯石の除去、PTC(プロフェッショナル・トゥース・クリーニング)、噛み合わせの調整を治癒経過に合わせて行います。

8割の歯周病はこの初期治療で治癒しますが、重度歯周病は外科処置が必要になる場合があります。この方には術前レントゲン写真から根尖(歯根の先端近く)まで歯周病が進行していた像が認められます。初期治療終了後の再診査で、歯周ポケット8mmと歯の動揺(ぐらつき)が残ったため、歯周組織再生療法を行いました。(外科処置に移行する場合は良好なプラークコントロールの方に限ります)

術前2

術前1

術中

外科処置中の写真です。
歯肉(歯茎)を剥離し、感染した組織や歯石を除去、洗浄後、再生材料を塗布します。やはり実際にも根尖まで歯周病が進行していました。

術後

術後5年経過です。レントゲン写真から骨の平坦化が得られるまで歯周組織の再生が認められます。初期治療前は10mmのポケットがあったが、術前の初期治療が適切に行われていた為、術後は健全な状態である歯周ポケット3mmで安定した経過をたどっています。

術前4

術前5

リスク

歯周組織再生療法は年齢、全身疾患の有無、喫煙、プラークコントロールレベル、骨欠損形態などによりどの程度の骨の再生が得られるか異なります。また、術後は一時的なしみ、腫れや歯肉の退縮が生じることがあります。

まずは歯周基本治療をきちんと行いましょう。

再生療法を行うにしても、まずは歯周基本治療を適切におこなわないと結果的に治癒が遅くなるなど、せっかく治したのに再発をしてしまいます。自宅でのセルフケア(プラークコントロール)とメンテナンスを行ない、歯周病の原因を根本から改善しないと歯周組織は再生しません。患者様と歯科医師・歯科衛生士が一体となって治療に専念することが大切と言えます。

重度歯周病で行う治療法です。悪化させないうちに専門医を訪ねてください。ご相談はいつでもお受けします。お気軽にお問い合わせください。