50代男性 重度歯周病を義歯で噛めるようにしたケース
治療の概要
BEFORE
AFTER
年齢・性別 | 50代 男性(来院時) |
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主訴 | 歯がグラグラする |
診断 | 重度歯周炎、二次性咬合性外傷、う蝕(虫歯) |
治療 |
歯周基本治療 歯周外科手術(歯肉剥離掻爬術) 根管治療 修復治療(コンポジットレジン) 補綴治療(メタルボンドクラウン、金属床義歯、治療用義歯) |
初診時の所感
この患者さんは、来院時は50代で飲食業で働いていました。
とても礼儀正しい方で、こちらの話も良く聞いてくださる方でした。
来院した理由は、歯がぐらぐらする。
という理由で、生活に支障をきたしている状態でした。
お口の中を拝見させていただくと、重度歯周病に罹患していました。
状況は芳しく無く、抜歯が必要である歯が多数認められました。
問題点
歯科ドックを行い、得られた情報を分析した結果、以下の問題点が複数発見されました。
- 咬合支持の不足
(噛む力を支えられる土台が不足している) - 加圧因子と受圧の不均衡
(噛む力と受け止める力のバランスが悪い) - 長い遊離端欠損
(本来奥歯があった場所までに長い欠損がある) - 欠損している部分に近い犬歯が弱体化している
診断
- 重度歯周炎
- 二次性咬合性外傷
(歯周病が進み、噛む力を受け止め切れなくなる) - う蝕(虫歯)
上記の3つが主な診断内容です。
治療計画
問題点を解決するために、以下の治療計画を立案しました。
- 保存不可の歯の抜歯、即時義歯装着
- 歯周基本治療
- WSD及びCへの対応、補綴が必要な部位は仮歯へ
・歯周外科治療
(※WSDはくさび状欠損と呼ばれる、歯と歯の境目の歯頚部の資質が欠損していること、Cは虫歯のことです。) - 即時義歯を治療用義歯として用い、咬合平面の是正・咬合の安定 ・最終補綴(クラウン、クラスプデンチャーのセット)で口腔機能の回復
上記の4つを行い、欠損歯の歯列に対する咬合の安定を目標としました。
補足:即時義歯について
本来、義歯を作成するためには歯が失われた部分の歯茎や粘膜の型取りをして、その形に合うように義歯を作成します。しかし、抜歯しなければならない歯があり、かつその歯がなくなってしまうと見た目を損なってしまう場合は、歯を抜く前に型取りをして義歯を作成し、歯を抜いた日に装着することができます。この義歯のことを即時義歯と言います。審美的なメリットがある反面、精密な型取りができないため、適合は悪く、最終的には新しく義歯を作り直します。
まずは咬合支持の確保へ
まずは保存不可の歯を抜歯し、治療用義歯を用いて咬合支持の確保を行いました。同時に根管治療を行い、歯を保存しました。(レントゲン写真=根管治療完了時)また、歯周病の改善のために、歯周基本治療も行っています。
義歯の安定が得られたあと、歯周外科治療を行う
義歯の安定が得られたあとに、歯周外科治療を行いました。
残存歯の保存を目的とした治療と、土台となる歯の整備を行いました。
臼歯部咬合関係と咬合平面の是正
臼歯部の咬合関係及び、咬合平面(かみ合わせの平面に規定される基準面)を是正していきました。
上顎を金属床義歯に、下顎は治療用義歯で経過観察を継続
治療開始時
上顎金属床義歯、下顎治療用義歯
術前との比較写真
ケースの纏め
本症例は、重度に進行してしまった歯周炎のため、歯を残すための治療だけではなく、保存が難しい歯は抜歯を行い、歯を失った後の噛み合わせの安定も目標とし治療を行いました。
初診の見立てでは、残存する歯の場所が噛み合わせを逆に悪くしてしまうような配置だったため危惧していましたが、最終的には義歯により噛み合わせの安定を得ることができました。
今後も、定期的なメインテナンスを継続しながら、残った歯の状態、噛み合わせの経過を見ていく予定です。
治療費用
治療内容 |
歯周基本治療 歯周外科手術(歯肉剥離掻爬術) 根管治療 修復治療(コンポジットレジン) 補綴治療(メタルボンドクラウン、金属床義歯、治療用義歯) |
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上記合計 | 約2,200,000円円(税込) |
リスクと副作用
- 歯周治療による歯肉退縮
- 知覚過敏
- 義歯の異物感