根管治療(歯内療法)について
根管治療=歯を保存するための治療
根管治療の説明の前に、歯の構造を考えてみましょう。この歯髄腔には神経および血管が存在し、熱い食べ物などを感じることができます。しかし、う蝕(虫歯)が進行し歯髄腔に達すると感染が拡大し、神経が失活します。
さらに、感染が進行するとそれまで歯の中に留まっていた感染源が根尖孔(根の先の穴)の外に当たる骨内に拡大し、膿が貯まり内圧が上がり痛みを生みます。さらに内圧が高まると骨と歯肉を突き破り口腔内に膿を排出する事で圧の解放をし痛みは引きますが、再び内圧が高まると痛みがでます。
このような状態まで放置すると物を噛んだ時に痛みが生じたり、歯肉に腫れが出たりします。
昔は歯髄に及ぶう蝕は抜歯の適応となっていました。そこで、抜歯せずに歯を保存するため、歯髄腔に拡散した感染を除去する治療が歯内療法(根管治療)です。
根管治療とは?
根管治療と一言にいっても大きく分けて2つに分けられます。初めて根管治療を行うのか、既に根管治療が行われている歯の再根管治療を行うのかです。
通常、初めての根管治療であれば1〜3回ほどで済みますが、再根管治療の方が複雑になります。その理由は根管治療を終える時に感染した神経を除去した箇所に薬(ガッターパーチャー;GP)を詰めます。再根管治療ではこのGPを除去した後に根管内の洗浄を行います。
また複数回の再根管治療を行なっている歯は元々の根管形態と異なり、人工的に複雑な形態になっていることが多い事などから治療時間が長くなったり、症状が落ち着くまでの時間がかかる事があります。
根管治療の流れ
- 感染源(歯冠部)の除去(う蝕、旧修復物を確実に除去)
- 隔壁の作成(無菌的な処置を行うために行うラバーダムを設置できるようにする下準備)
- ラバーダム防湿(唾液の侵入防止、薬液の漏れ防止、確実な防湿)
- 感染源(歯根部)の除去(旧充填物、感染歯質)
- 根管充填(根管内に緊密な充填を行い再感染を防ぐ)
- 支台築造(根の治療を行なった後に行う)
根管治療の成功のポイント
ラバーダム防湿
根管治療の原則は
- 適切なラバーダム防湿
- 適切な根管拡大
- 適切な貼薬・仮封
- 適切な根管充填
- 適切な補綴(被せ物;クラウン)処置
どのような治療でもそうですが、一つひとつのステップにおいて「基本に忠実」な診査・診断・治療の積み重ねが成功のポイントと考えます。
マイクロスコープ
マイクロスコープは最大約20倍まで治療部位を拡大することができます。特に根管治療のような精密な治療が求められる場合には、マイクロスコープは必須と言っても過言ではありません。肉眼では「経験や勘」に頼らざるを得ませんでしたが、マイクロスコープを使用することで更に精度の高い治療を実現することが可能となります。